• Feb.
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  • 15
  • 2021
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中国イノベーションシーンに迫る:第4回
AIと共に進化する
ハードウェアのシリコンバレー、深セン

上海、台北、北京に次ぐシリーズ第4回目は、中国の有名ハードウェアメーカーが本拠地を構える一方、AIなどのスタートアップが豊富に誕生していることから、近年はソフトウェアでの活躍も目立ち、その融合結果としてオートメーション関連技術などで世界を率いる深センを特集します。今回は、そのエコシステムを支える複数のスタートアップの経営陣に、その強みや特徴について伺いました。

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経済特区として近代都市に生まれ変わった深セン

深センは、改革開放の一環として輸入関税や法人税の減免、海外資本や技術の導入が認められるなど、経済発展のために特別な地位を与えられる経済特区(SEZ)であり、2020年10月にそのSEZ設立40周年を迎えました。香港へも地下鉄でアクセスできる距離に位置し、1980年代にはたった30万人の漁村だった深センは近年、1300万人が住む巨大都市に変貌を遂げました。その変化は、以下の比較写真からもご理解いただけるでしょう。またそのGDPは、2019年には約3.9億ドルに達し、香港の約3.6億ドルを初めて上回る結果となりました。

Source: https://twistedsifter.com/2012/02/picture-of-the-day-shenzhen-china-30-years-later/

 

製造業に融合するソフトウェア技術

深センは、過去にFinancial Timesより「ハードウェアのシリコンバレー」と名付けられたことがあります。現在もHuawei、ZTE、Tencent、BYD、TP-Link、さらにドローンメーカーのDJI などが本社を構えるテックハブとして知られ、世界の電子機器製造の推定90%を占める同地域は、グローバルな生産プランを持つ欧米電子機器メーカーの進出先として、長い期間トップに君臨してきました。

しかし、若い労働力がより質の高い仕事と高額な賃金を要求している影響で、中国の平均賃金は2001年以来、毎年約12%も増加していると同時に、環境改善を目的とした中国政府の取り組みにより、2017年だけで80,000もの工場が処分を受けました。その結果、世界の大手メーカーはベトナム、タイ、インドネシアをはじめとする低コストの東南アジア諸国に焦点を移すようになりました。とは言うものの、深センにおけるAIやソフトウェア関連の革新的技術開発の進展により、この状況に変化が生まれています。

 

深セン発スタートアップの特徴と強み

今回、私たちは複数の革新的な深セン発スタートアップの経営陣に話を伺いました。これらのインタビューを通して、同地域が先述したような大手中国メーカーが主導する強力なハードウェアのルーツから急速に拡大し、ソフトウェアとAIにおけるイノベーションの中心地となっていることが明らかになりました。そして、これは深セン及び広東省に位置する製造業とロジスティクス産業に、新たなレベルの自動化と効率化をもたらし、結果的に周辺地域は東南アジアと競争するに十分な強力な立場を取り戻しつつあります。

人間の視覚精度を上回るAI でGoogleが率いる国際的なコンピュータービジョンに関連するコンテストにおいて優勝したMalong Technologiesの事業開発ディレクターであるWolf YUAN氏によると、同社は政府より減税と補助金だけでなく、1フロア/1,700平方メートルの賃貸スペースを2階分無料で提供を受けたと言います。そして自身の経験を踏まえ、「AIは国家戦略レベルで支持を受けていることから、地元政府もこの業界への支援に非常に積極的です。また、深センは常に中国の技術開発において先頭を走ってきたこともあり、このような補助を活用するために多くのAI企業がここに拠点を立ち上げていくことでしょう。」とも語っています。

またAlibabaの一部であるYF Capital、GSR Ventures、Baiduから出資を受け、効率的な製造に不可欠なサプライチェーンの倉庫管理と物流を実現するWhalehouseは、自律型倉庫におけるロボット活用のパイオニアとして知られています。彼らの技術により人件費が最大80%削減され、スペース効率も6倍に向上すると言われています。同社のCTOであるJun ZHANG氏は、以下のようにコメントしています。「スペースと労働力の節約、そしてその使いやすさが自律型倉庫の鍵となっています。自律型物流の市場は中国だけでなく、米国、ドイツ、日本など、賃貸料や人件費がさらに高い先進国に存在しているため、私たちは同システムの国際特許を申請しています。」

一方、GoodScanも製造効率化に役立つAIを開発しています。3Dモデリングを使用してパッケージのサイズを把握する同社のソフトウェアは、パッケージの幅、高さ、長さ、及び重量の測定値をミリメートル単位で迅速に取得すると同時に、バーコードと写真をキャプチャすることで、たった1秒でその処理を完了することができます。CEOのXiao ZHANG氏によると、これにより輸送、労働、梱包の必要性が効率的に判断され、労働者の生産性が向上するため、Huawei、DHL、Schneider、Synnexなどのクライアントは、数百万ドルの節約を実現していると言います。

 

優れたデベロッパーと移民の存在

深セン独特のリソースとしては、6,000人のアルゴリズム開発者を抱え、一般的な市場価格の10分の1でAIソリューションを展開するマーケットプレイス運営のExtremeVisionなどのスタートアップも含まれます。これらの開発者の平均年齢は26歳と非常に若く、多くが大学卒業後にそのままこのような職についています。

ExtremeVisionの共同創設者であるIris Liu氏は、「深センは、北京や上海に比べて居住登録の要件が緩いため、その人口は若くて多様です。また深センでの人材採用は、出身校、ネットワーク、業務経験よりも個人の能力を重視しています。」と語っています。その結果、企業の公平性と使命感が若い労働者世代にアピールし、高学歴で、高い自己充足・自己実現を求める優秀な求職者が、同社のような革新的な深セン在スタートアップに集まってきています。

これは、推定700万人の未登録の移民労働者が存在する同都市に根付く包括的な文化とも言えます。実際には登録労働者である1300万人でさえも、その多くが第一世代または第二世代の移民です。この深セン独特の人材環境は、同地域が電子機器製造の世界的中心地としての地位を維持し、さらにこの分野において才能と革新を求める外国企業のために、高度なスキルを持つソフトウェアとAIのエキスパートの人材プール育成に貢献しています。

 

最後に、、、

元々はハードウェアに関連するイノベーションの中心地として知られている深センですが、政府の政策にも後押しされ、急速に新興するそのAIへのフォーカスは、AI・ソフトウェアに注力する日本企業にとって重要な鍵となるはずです。さらにその元からの強みを生かし、最先端レベルのオートメーションを求める製造メーカーにとっても、非常に興味深い地域であることは言うまでもありません。

この機会に、製造業に強みを持ち、さらに人口減少により自動化・効率化の重要性がますます高まる日本企業とって、最適なソリューションを持ち合わせる深センに目を向けてみてはいかがでしょうか。このようなハードウェアとソフトウェアの優れた組み合わせが魅力的な深センのエコシステムにご興味がございましたら、ぜひinfo@intralink.co.jpまでお声掛けください。

 

筆者について

Emma Hsu(プログラム・マネージャー)

台湾出身、カナダ育ちの中英バイリンガルで、10年間カナダで就労していた経験がある。現在はイントラリンク上海オフィスで、オープンイノベーショングループのプログラムマネージャーとして活躍している。