• Jun.
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  • 29
  • 2020
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パンデミックで加速した
デジタルトランスフォーメーション:韓国編
韓国デジタルヘルスケア業界の台頭

今シリーズ2回目となる今回は、中国に次ぎ2番目にCOVID-19の大きな影響を受けた韓国です。昨今新しいケースが複数報告されていますが、日本よりも早い段階でロックダウンが解除や対面会議の実施が再開されるなど、現在の韓国ビジネス環境は限りなく通常に戻りつつあります。

今回のパンデミックを通じて韓国は、その影響に対する効果的な対応の中心となったヘルスケア業界の強さを世界に見せつけました。その支えとなったのは、やはりデジタル技術の活用でした。前回の中国編に続き、今回はメドテック及びライフサイエンスを専門とする弊社ソウル拠点のRuslan Tursunovが、パンデミックへの迅速な対応を可能にした韓国のデジタルヘルスケア業界の現状について解説します。

 

優れたデジタルヘルスケアインフラ

韓国政府は、上昇する医療コストへの対策として、また世界トップレベルの医療システムの持続性を確保するため、長い間デジタルヘルスケアへの投資を奨励してきました。そして、既に同国の医療業界の特徴となっていたAI関連の技術が、COVID-19に対する迅速で柔軟性のある対応に大きく貢献しました。

例えば、最初に中国で新型ウイルスが出現したという報道があった際、診断を専門とするSeegeneは、サンプル採取は行わず、既に利用可能な遺伝関連詳細だけを利用してCOVID-19のテストキットを設計しました。開発期間は大幅に短縮され、同社はたった3週間で国内の規制機関にこのキットを提出することができました。その後、FDAから緊急使用許可も取得し、現在提供する95%のキットを米国やその他アジア各国に輸出しています。

韓国の効果的なテスト、追跡、隔離措置は、国内のデジタルヘルスケアインフラに大幅に支えられてきました。AIやビッグデータに基づいたメディカルプラットフォームだけでなく、隔離された人々をモニターする遠隔医療技術やモバイルアプリにより、早期識別方法の開発や拡大防止対策の急速な開発を可能にしました。

その結果、韓国政府はこの方向性が正しいということを確信し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、システム半導体や次世代自動車だけでなく、バイオテックへも集中的な投資を行うことで、同国がデジタル技術へ世界をリードしていくと公言しました。

 

AIを活用した治療薬開発

韓国ではAIも治療薬開発にも活用されており、科学技術情報通信部によると、AIによる国内医薬品開発市場は毎年40%の伸びが期待され、2024年には29億ドルにまでのぼると発表しています。

バイオインフォマティクス企業のSyntekabioにおいて、Medical Science Executive Directorを務めるヤン・ヒョンジン博士によると、同社は開発するDeepMatcherと呼ばれるAI創薬プラットフォームを使用して、世界中3000以上の認可取得済み治療薬をスキャンした結果、30以上のCOVID-19治療薬候補を特定したといいます。

Syntekabioは現在、バイオセーフティレベル3(BSL-3)の施設で予測結果を検証中で、その後COVID-19感染者への使用に関する特許申請を行い、元の開発者と共同で前臨床及び臨床研究を実施する予定です。

 

遠隔医療の台頭

同時に、複数の医療機関が、以前は医師からの反対で禁止されていた遠隔医療の提供も開始しました。このサービスには、ビデオ電話上での軽症者の状態確認、診断、薬の処方などが含まれています。またいくつかの病院ではロボットを使用して感染の疑いがある患者をテストし、医師が別室からモニターすることで、医師への感染リスクを軽減する試みも見られました。

遠隔医療に関しては、長年禁止されていたにも関わらず、2015年のMERS流行時にも活用されましたため、その可能性は国民にも認識していました。最近の調査では、ほとんどの国民が遠隔医療を試すことにオープンであると発表されました。そのため、今後韓国では遠隔医療の大規模導入を促進するため、更なる措置が講じられると考えられます。

 

支持される個人情報活用とビッグデータ

何年もの間、韓国政府は医療機関やヘルスケア企業が収集したデータを活用して、感染症などの致命的な病気の治療薬開発を奨励するために緊密に動いてきました。

情報保護規制は緩和され、政府は病気の監視やテストにデータを使用してきた上、一般市民も、そのようなCOVID-19の感染拡大を防ぐことを目的としたデータ使用をますます支持を示すようになりました。最近の調査結果と周りから聞く話では、このような状況では、ほとんどの人がプライバシーへの懸念よりも公衆衛生を優先しているようです。

その結果、ビッグデータは国内でCOVID-19に立ち向かうための最も重要なツールの一つとなりました。ブルームバーグでさえ、『少々個人的なものになっても、韓国ほど効果的にビッグデータを活用している国はない』と伝えています。

この試練の最中、住民は感染が確認された人々の所在や、最近の活動に関する公開情報とともに、一連の緊急メッセージを主要電気通信事業者から受け取ってきました。政府のデータを使用し、感染者が訪れた場所から100メートル以内に入った利用者にアラートを送る追跡アプリのCorona 100mも、2月上旬に配信開始されました。またビックデータに基づいたCoronamapでも、感染者の移動履歴が見ることができるようになっています。

さらに科学技術情報通信部は、8種類のヘルスケアデータを含む、1,310テラバイトのデータを民間部門が利用できるよう計画しており、公的データと私用データの統合を可能にすることで、個人情報の使用を加速していくと述べました。

 

世界をリードするマーケットへ

複数の感染が新たに確認はされていますが、韓国は国内経済を継続的に動かし続けること可能にした、焦点を絞ったスマートなデータ主導の対策を通じて、COVID-19との闘いにおいて成功を収めてきたと言えます。そして、昨今の規制の変更や発展したインフラだけでなく、イノベーションへの意欲により、韓国は急速に拡大するデジタルヘルスケア市場になっていくかもしれません。

 

イントラリンクは、ソウル拠点を含む欧米・アジアの各地域に各セクター及び最新技術に関する専門知識を有したチームを配置しています。デジタルヘルスケア業界や関連するスタートアップ、また韓国イノベーションエコシステムにご興味がございましたら、ぜひイントラリンクinfo@intralink.co.jpまでお声掛けください。

 

著者について

Ruslan Tursunovは、ソウル拠点からメドテック&ライフサイエンスグループの一員として、デジタルヘルスケア、ゲノミクス、精密医療など高度な医療技術にわたり、欧米企業の韓国進出をサポートしている。 韓国語が流暢で、以前は韓国のバイオ医薬品に特化したGL Rapha で勤務した経験を持つ。