• Apr.
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  • 26
  • 2021
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北米テックハブにクローズアップ:第3回
カナダのAIパワーハウス、モントリオール

カナダ第2の都市、また世界第2のフランス語圏である上、近年のAI領域での成長をベースに、ワールドクラスのテックハブとなりつつあるモントリオールを特集します。

ゲームやVFXの領域で長年世界をリードしてきたモントリオールですが、近年はスタートアップや高等教育機関が豊富なAIの専門知識を養ってきました。さらに低い生活費に対して高い生活の質が、技術的才能と学術研究の成長を促進してきた上、過去10年間の政府による支援とローカルベンチャーキャピタルの流入が、スタートアップシーンに火をつけました。

 

モントリオールエコシステムのスペシャリスト4名へのインタビュー

今回も、弊社イノベーションネットワークパートナーであるMontréal InternationalやTandemLaunchをはじめとする現地のイノベーション組織4社へのインタビューを通じて、このイノベーションシーンが起業家やテクノロジースカウトにとって重要な目的地である理由について、詳細を伺ってきました。以下、4名の紹介及びモントリオールの特徴と強みを8つのポイントにまとめています。

・Alan MacIntosh, board member @ Real Ventures & OSMO: 3億3000万ドルの資産を保有し、カナダを拠点とするアーリーステージ企業を中心に資金を提供するReal Venturesは、テクノロジーを活用して社会に大規模な影響を与えることができる創業者へのday 1からのサポートと彼らが活躍できるエコシステムの成長に注力している。

・Mark Maclean, Senior Director of Business Development for the Americas, Asia, and Entrepreneurship @ Montréal International:Mark は、カナダおよび地元政府の支援を受ける同組織において、モントリオールのビジネス環境を外国企業にアピールすることで、グレーターモントリオール地域への企業設立・拡大を支援している。

・Omar Zahr, Director of Technology @ TandemLaunch: 世界中で600以上の大学に広がる独自ネットワークから毎年何千ものテクノロジーをスカウトし、IPに焦点を当てたスピンアウト企業を輩出するTandemLaunchにおいて、Omarは 新技術への投資機会の調達と発掘だけでなく、コンシューマーエレクトロニクス業界にてハイテック企業として大学で開発された技術の商業化・ライセンシングを担当している。

・Charles Marsh, CCO @ Deeplite:Charlesは、テック企業のローカルおよびグローバル市場成長加速における豊富な経験を持つビジネスリーダーであり、Mnubo Inc. と OZ Communicationsのモントリオール発スタートアップ2社で、エグジットによる成功を収めてきた。

 

1. 多彩で優れた人材を引きつける緊密なエコシステム

Omar:「モントリオールでは、1:低コストでありながら生活の質が高いため、起業家や技術者にとって魅力的である、2:世界中から多様で勤勉な人材プールを引きつけている、3:授業料が比較的低い世界クラスの大学が集中している、という3つの重要な要素の融合がその革新を後押ししています。」

Mark:「同都市には、スタートアップが研究機関、地元企業、海外企業と提携する独自のコラボレーションエコシステムが構築されており、主要な国際都市であると同時に、その才能を維持するために機能する緊密なエコシステムとなっています。」

 

2. AIを中心に発展する強力セクター

Mark:「モントリオールはビデオゲーム、AI、サイバーセキュリティ、VFX、フィンテックにおいて顕著な強みを持ち合わせています。特にAIセクターにおける同ハブのポジションは、Yoshua Bengio氏(モントリオール大学の教授であり、世界で最も引用されているコンピューター科学者)と彼が設立したAI研究機関のMilaによって確立され、結果的にはサイバーセキュリティとフィンテックにおけるプレゼンスも高まっています。」

Alan:「AIとともに、気候テック、ライフサイエンス、ディープテックの領域でも大きな勢いがあります。」

 

3. 国内外から流入・拡大する人材プール

Alan:「モントリオールは過去10年間、起業家精神の面で大きな進歩を遂げており、最近は、多様な創設者と多国籍チームを見かけます。また海外からの優秀な人材の流入に加えて、このエコシステムがより成熟している今、海外に出ていたカナダ人の多くが地元に戻ってくるということもよくあります。今後テック企業がさらに成長するにつれて、起業家も増え続け、人材プールがさらに充実することでしょう。」

Charles:「市内に設立される多国籍テック企業の増加に伴い、人材プールもさらに拡大しています。」

Omar:「(世界トップ大学における発明に基づいたアーリーステージスタートアップをインキュベートし、さらにその成長促進を行う)TandemLaunchのビジネスは、高度な学位を持ち、起業家精神の高い人材を引き付ける必要があります。世界的に見てもそのような人材は非常に少ないものの、モントリオールのコスト構造と生活の質のおかげで、私たちはこのような優れた人材を数多く引きつけることに成功してきました。」

 

4. 高等教育機関との緊密な協力(体制)

Mark:「モントリオールは北米第1の学生都市としてランク付けされており、世界中の留学生を魅了しています。」

Charles:「ここには大学における世界最大の深層学習AIコミュニティが存在し、その研究資金は10億ドルを超えるとともに、300人を超える研究者と大学院生を抱えていおり、McGill UniversityやUniversité de Montréalなどの有名大学は、Canada Research Excellence Fundだけでそれぞれ1億ドル近くという非常に顕著な資金を受け取っています。」

 

5. 投資の焦点はアーリーステージ企業に置かれている、成熟したエコシステム

Alan:「弊社を立ち上げた2007年以降、資金調達の状況は劇的に改善し、起業家としての経歴を持ち、リスクを冒すことを恐れない人材が増えるとともに、投資のボリュームも拡大しています。シリーズB周辺にはまだギャップがありますが、知識が豊富な創設者たちは、複数のソースから資本を呼び寄せています。」

Charles:「カナダにおける投資は、依然として米国よりも保守的であるため、資金調達額はまだ全体的に少ない状態ですが、起業家たちは事業を始めた時のメンバーとともに会社を成長させるという利点を持ち、最終的にはIPOやエグジットなどその他選択肢があることを理解しています。」

 

6. 政府によるワールドクラスの支援プログラム

Alan:「モントリオールには、北米、間違いなくカナダにおいて最高レベルの政府による経済的優遇措置が存在しています。実際に税額控除がモントリオールにおけるゲーム業界成功の重要な要素であり、R&Dでも同様の税額控除が行われています。」

Omar:「国内で実施したR&Dに関する経費を税額控除する制度であるSR&EDプログラムなどが、ビジネスにおける技術レベルを深掘りし、スタートアップの創出をサポートする一方、人材面でも、国内65大学および6,000以上の企業が年間5,000件の産学連携案件を組成する非政府組織Mitacsのような構造により、企業が学生向けの研究・トレーニングの機会を創出することを奨励しています。」

 

7. イノベーションを追求する企業からの関心の高まり

Alan:「私たちが地元のスタートアップコミュニティの成長を加速させるために非営利団体OSMOを設立した理由の1つは、企業と起業家の間の隔たりを埋めることができる物理的な空間を作ることでした。過去5年間で、OSMOは大きく成長し、ローカルおよびグローバル企業の多くのCIOがモントリオールエコシステムに注目しています。」

Mark:「非営利のBonjourStartupMontréalとそのイニシアチブであるInnostartupのおかげもあり、イノベーションを促進するための組織間のコラボレーションは急速に拡大しています。カナダ最大の協同組合金融グループであるDesjardinも『Coopérathon』会議を開始し、この相互作用を推進するハッカソンやチャレンジがますます増えています。」

 

8. 日本企業への高い適性

Alan: 「私たちは、北米の他都市よりもはるかに協力的で国際的な関心を持っているため、モントリオールのビジネス文化も、日本の企業パートナーにとって非常に快適だと思います。さらに、当地で構築されたテクノロジーと組み合わせれば、長期的なパートナーシップを構築するのに最適な場所になることでしょう。」

 

最後に、、、

米国都市の影に隠れがちなカナダ・モントリオールですが、近年のAI領域での成長、また同都市に魅了されて集まる多彩な人材を中心に、その国際的なエコシステムは成長を続け、世界的にも大きな注目を集めるようになってきました。特に米国内でのイノベーション活動を活発化している日本企業にとっても、その一歩先をいく形でカナダまで視野を広げる際の切り口として、モントリオールへ目を向けてみてはいかがでしょうか。同ハブへのご関心をお持ちの方は、ぜひ info@intralink.co.jp までお声掛けください。

 

筆者について

Kris Miller(事業開発ディレクター)

クリスは、弊社ロサンゼルスオフィスを拠点に、日本大手企業と北米スタートアップ間のコラボレーションプロジェクトに従事している。カリフォルニア大学アーバイン校にて医用生体工学修士号を取得しており、神経科学と医療技術をはじめとするヘルスケア分野に精通している。イントラリンク入社以前は、日本政府機関の国際的な拡大と事業開発に携わっていたため、日本語も流暢である。