• Feb.
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  • 02
  • 2021
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北米テックハブにクローズアップ:第2回
カリフォルニアのダークホース、
ロサンゼルス

イノベーションというキーワードから、ロサンゼルスを思い浮かべる人はそう多くないでしょう。サンタバーバラやオレンジカウンティと隣接し、1万平方キロメートルの広大な地域に広がるロサンゼルス郡の中心地であるロサンゼルス(LA)は、同じくカリフォルニア州に位置するシリコンバレーの影に隠れがちです。

しかし、この地域はイノベーションハブとして成長するのに貢献する利点を多く持ち合わせています。その大規模なマーケットサイズは、スタートアップがあらゆる市場で持続可能なビジネスを構築することができる上、他セクターの強みを活用できることを意味しています。また学術的及び研究的強みが、ますます多くのVC資金に変換され始め、シリコンバレーから多くの優秀な人材も集まってきています。

 

L Aエコシステムのスペシャリスト3名へのインタビュー

今回、弊社LAオフィスのクリス・ミラーが、LAのイノベーションシーンで活躍する3名のキープレーヤーにその魅力について直接話を伺ってきました。以下、ロサンゼルスの強みをポイントにまとめ、インタビュー形式でそのテックハブとしての可能性を明らかにしていきます。

Jim Cooper, CTO @ Braid Theory:ブルーエコノミー、ブルーテック、ライフサイエンス、エネルギー・ウォーター、クリーンテック、アグテック、航空宇宙企業を専門とするアクセラレーター・インキュベーター。Jimは『Fun(楽しさ)』をFund(ファンド)に組み込むため、VC支援を受けたアーリーステージの革新的なテック企業にアドバイスを提供している。

Minnie Ingersoll, Partner @ TenOneTen:優れたチームに積極投資を行うVC。Minnieは以前、中古車売買でベターなユーザーエクスペリエンスを提供するオンラインマーケットプレース、ShiftのCOOを務めた経験を持つ。

Dave Whelan, CEO @ Bioscience LA: LAのライフサイエンスエコシステムを支えるイノベーションカタリストである同社の初の常任CEO。Daveは、LAで20年の経験を持つ豊富な戦略・事業開発エグゼクティブで、テック、ヘルスケア、ウェルネスの分野でビジネスを構築してきた。現在は、すべてのステークホルダーに新しい機会を生み出す、活気に満ちたエコシステムの成長に情熱を注いでいる。

 

1.LAは、その市場規模が1番の利点となっている

Minnie:「投資家として、私は製品、チーム、市場に注目しています。LAにはメキシコ市場を上回るといわれる1兆ドル規模の経済が存在するため、同都市の企業は早い段階で市場の適性を証明する機会があります。」

Jim:「カルフォルニア州の45%を占める経済により、ここでは市場機会が特定のセクターに限定されず、スタートアップはほぼすべての分野に拡散しています。」

Dave:「南カリフォルニアの医療イノベーターは、臨床試験と医学研究に取り組む代表的な組織のほぼ全てにアクセスすることができます。つまり、LAの人口とその多様性により、LAは医療イノベーションに理想的なのです。」

 

2. まだアーリーステージのエコシステムであるものの、進化し続けている

Minnie:「南カリフォルニアは他のどの地域よりも多くの博士号取得者を、UCLAは最も多くのスタートアップを、カリフォルニア工科大学は最も多くの特許を生み出しています。さらにApple、Google、Facebookなどのメジャーなテック企業が顕著な存在感を置き、同地のエコシステムを支えています。10年前ならば、サンドヒルロード(Sand Hill Road:SVで数多くのVCが立ち並ぶ通り)の投資家は、自身のポートフォリオ企業にベイエリアに拠点を移すようアドバイスしていたことでしょう。しかし今となっては、多くのファンドがポートフォリオ企業がL Aにとどまることを望む上、LAにパートナーを異動させています。」

Dave: 「ライフサイエンスへの資金は、以前は非常に限られていたものの、2020年12月にWestlake Village BioPartnersが計5億ドルに上る2つのファンドを設置しました。さらにLA最大のVCである Upfront Venturesも、ライフサイエンス専門のパートナーを配置した上、Vida Ventures of Bostonなどの投資家もLAを第二の拠点に選んでいます。またLA郡政府がインキュベーター、労働力開発プログラム、バイオサイエンス投資基金を通じて支援を行い、さらにもともと英国企業であるHeadspace(オンラインヘルスケア)が成長段階でLAに本社を移すなど、LAのライフサイエンスエコシステムには、優れた企業を成長させ、同地に維持するためのすべての要素が備わっています。 」

 

3. 幅広いセクターの基盤となっているLAは、同時に特定の分野でも強みを持つ

Jim:「LAは、アドバンストマニュファクチャリングの最大の市場であり、また米国におけるインバウンド貨物用の2つの最大の港があることで、巨大なインフラと輸送市場が整っています。」

Minnie:「特にロジスティクス(国内で最大の港と製造業が最も多いため)、ゲーム、メディア、eコマース、スペーステック、ロボティックスに強いと言えます。また消費者ブランディングにおける独自の強みから、コンシューマーテックにも適しています。」

Dave:「航空・スペーステック、アパレル、ケミカルマニュファクチャリングで主導的な地位を占めているLAは、製薬だけでなく、アグリ・フードテックや工業バイオテック、ファッションにも影響を与えるバイオマニュファクチャリングにおいても伸びを見せています。」

 

4. 産業の多様性が、セクターを超えた新しいビジネスチャンスに繋がっている

Dave:「現在、ヘルスケア、テクノロジー、ユーザーエクスペリエンスにまたがって事業を展開している企業が増加しています。例えば、GoodRx(薬価の引き下げに焦点を当てた遠隔医療アプリ)は、消費者には価値を、開発者には処方箋使用に関するより良いデータを提供することで、デジタルヘルスとインシュランスの間で動作しています。またデジタルヘルス企業は、コネクテッドカーとスマートホームという主要なIoTアプリケーションにますます関与するようになっています。そして、 LAにはこれらのIoTのキーとなる3分野に属する企業の多くがが拠点を置いています。」

Jim:「一例として、過去に提携したワクチン輸送専用の不凍液製品開発企業が挙げられます。本質的には、材料科学に基づいた上でヘルスケアに特化したインフラ企業と言えます。LAには、単一のセクターに焦点を当てているテックハブとは異なり、各セクターに特化した市場とエコシステムが構築されているため、業界をまたいでイノベートする企業をサポートすることができるのです。」

Dave:「人口の多様性も強みです。多様な労働力は、より革新的なソリューション、自分たちのコミュニティにサービスを提供するベターな能力につながります。」

 

5. ロサンゼルス大都市圏は広範囲に広がっているため、アプローチが難しいものの、ユニークな利点も持ち合わせている

Jim:「LAの大都市圏は、実際には複数のエコシステムの複合体であり、それぞれに独自のネットワーク効果と集積の経済があるため、どのサブエコシステムが各企業の関心の高い業種で最も強いかを評価する必要があります。私たちは実際、サンペドロのような大規模なハブ間の地域に焦点を当て、これらを『第2の都市』または『急成長都市』と呼んでいます。これらの地域の企業にとって、パイロットプロジェクトを実行し、その価値を実証するのは難しいことではありません。つまり、LAは、主要ハブのインフラストラクチャを備えたこれらの「急成長都市」へのアクセスも提供しています。」

 

6. LAシリコンバレーからの才能と資金からも恩恵を受けてい

Minnie:「10年前に友人にLAに異動するという話をした時、彼らはそんなアイデアを持つ私がクレイジーであり、テック業界から離れるべきだと考えていたと思います。しかし今、私は周りの友人からどのようにしてLAに乗り替えていくべきなのか、よく尋ねられます。」

彼女のポッドキャスト『L.A. Venture』において、Sherpa Capital の創設者で、かつUber、Facebook、Stripeの初期投資家であるScott Stanford氏は、「LAには、素晴らしい新興エコシステムがあります。そしてLAにはすべての重要な要素が揃っており、上昇傾向にあると思います。」と同様の考えを述べていました。

 

7. 今後もその勢いはしばらく収まる気配なし

Dave:「LAは、2022年にスーパーボウル、2026年にワールドカップ、2028年にオリンピックの開催地となるなど、大きな注目を集めています。人々はこれを『the decade of LA(LAの10年)』と呼んでいます。この期間は、ストーリーを書き直し、ここで起こっているライフサイエンスの革新を拡大する良い機会だと思います。」

Minnie:「私はポッドキャストの全ゲストに、LAに何が欠けているかを尋ねています。すると8割の人が、LAに足りないのは時間だけだと答えます。実際、L.A.のベンチャー投資は過去10年間で8倍に増加しており、『ロケット船に乗っているような気分』です。」

 

最後に、、、

LAは巨大な地元の市場と高度なインフラに支えられ、マニュファクチャリングからヘルスケア、コンシューマーテックまで幅広い分野における活躍が見受けられるとともに、それがいま、新しいビジネスチャンスを生み出しています。既にSVにイノベーション拠点を置く日本企業も多い中、次の着目地点として、物理的にも距離が近いLAのエコシステムにも目を向けてみるのも良いアイデアかもしれません。次の10年での急成長に期待の高まるロサンゼルスのエコシステムやスタートアップにご興味がございましたら、ぜひ info@intralink.co.jpまでお声掛けください。

 

筆者について

Kris Miller(事業開発ディレクター)

クリスは、弊社ロサンゼルスオフィスを拠点に、日本大手企業と北米スタートアップ間のコラボレーションプロジェクトに従事している。カリフォルニア大学アーバイン校にて医用生体工学修士号を取得しており、神経科学と医療技術をはじめとするヘルスケア分野に精通している。イントラリンク入社以前は、日本政府機関の国際的な拡大と事業開発に携わっていたため、日本語も流暢である。