• Aug.
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  • 04
  • 2022
  • EUROPE PICK OF THE WEEK

欧州イノベーションインサイト:第120回

『仏エコシステム、過去最高のVC投資額を記録 』『 量子コンピューティングのIQM、気候危機対策に向け資金調達 』『ついにグリーン水素がLNGよりも安価に』『昆虫の脳をモデルにしたロボット向けAI』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第120回」をお届けします。

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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。

 

仏エコシステム、過去最高のVC投資額を記録

フランスは欧州でも有数のイノベーションハブの一つであり、そのエコシステムは近年ますます力強く成長している。Dealroomの最新の発表によると、フランスは直近3ヶ月のVC投資において、第2四半期としては過去最高となる37億ユーロを調達した。これにより、同期間のVC投資において、フランスは英国を除く欧州エコシステムの中で1位となった。この中で多額の資金調達に成功した企業には、EcoVadis (ESGのパフォーマンス分析ソフトウェア)、 HR Path(人事・給与計算)、KPLER(コモディティに関するデータ提供)、Alan(デジタル健康保険)などが名を連ねている。また2022年上半期を見ても、仏スタートアップは昨年同時期の1.6倍となる過去最高の89億ユーロを調達し、そのエコシステムの価値総額は2,600億ユーロ以上に達した。年々増加傾向にある同国内でのVC活動は、フランスエコシステムの成長の証といえるだろう。

 

量子コンピューティングのIQM、気候危機対策に向け資金調達

量子コンピューティングは、戦略的に重要な分野として現在注目を浴びている。そんな中、フィンランド発IQM Quantum ComputersがシリーズAラウンドで、同分野における欧州史上最高額となる1億2800万ユーロを調達した。IQMは、スーパーコンピューティングデータセンターや研究所向けのオンプレミス型量子コンピュータを開発し、そのハードウェアへのフルアクセスを実現する。同社は今回の資金調達により、製品の開発加速と、全世界的な気候変動対策に向けた量子プロセッサの開発に注力する予定だ。弊社イノベーションネットワークパートナーであり、同ラウンドのリードインベスターである欧州大手VCのWorld Fundによると、量子コンピュータの活用により、年間600 MtのCO2排出量削減が見込まれ、さらに最高で7 Gtの排出量削減の可能性があるという。 IQMのソリューションは、数多くの気候変動対策技術の向上に貢献し、今後欧州が量子テクノロジーと気候変動対策技術におけるリーダーとしての地位確立を後押しすると期待されている。

 

ついにグリーン水素がLNGよりも安価に

世界的なエネルギー価格高騰の影響で、欧州ではトルコを含む8ヵ国(ドイツ、イタリア、フランス、イギリス、ポーランド、スペイン、スウェーデン、トルコ)でグリーン水素が天然ガス・LNGよりも安価となっている。グリーン水素は、再生可能エネルギーにより生成された電力で水を分解する電解槽によって製造されるため、温室効果ガスの排出を抑制するクリーンエネルギーとして知られている。通常、グリーン水素の価格は再エネと電解槽の価格に左右されるものの、政府や企業による研究開発への重点的な投資と技術進歩が成果を上げ、電解槽の価格は急速に低下している一方、その需要は増加し続けている。  BloombergNEFによる保守的な試算でも、今年の電解槽の売上は、例年の3倍になることが予想されている。2024年以降は、新たなLNG施設の稼働により現在のひっ迫した市場が緩和されるとの見通しで、この価格状況も長く続くものではないと予測されるものの、当面はグリーン水素がコスト、環境対策の両面から好まれる選択肢になるだろう。

 

昆虫の脳をモデルにしたロボット向けAI

AI開発のために生物の脳を模倣するアイディアは以前より存在していたが、英University of SheffieldのスピンアウトであるOpteranは、ロボット工学に応用可能な衝突回避とナビゲーションに関する新たなアルゴリズムを開発するため、昆虫の脳をリバースエンジニアリングする技法を確立した。 同社は、このAIへの新しいアプローチを「 natural intelligence 」と呼ぶ。これは写真測量やAI・ディープラーニングなど大量のデータセットを必要とする通常のコンピュータビジョンアプローチとは異なり、ミツバチがナビゲーションやコミュニケーションのために使用する生物的なアルゴリズムを模倣している。この技術は、既に自社のロボット犬デモ機「Hopper」に加え、顧客のパイロット版である協働ロボットアーム、ドローン、採掘ロボットなどにも活用されてきた。なお、Opteranは先日、この独自アプローチの商業化や更なるアルゴリズムの開発に向けて1,200万ドルの資金調達を完了したばかりだ。

 

植木 このみ

Open Innovation Group, Intralink Limited

 

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