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  • 2021
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欧州イノベーションインサイト: 第68回

『欧州へのCVC投資が過去最高額を更新』、『重力エネルギー貯蔵システムのEnergy Vaultが資金調達』、『大手商社が相次いでイスラエル企業へ出資・提携』、『傷の治療スピードを高めるバイオテック技術』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第68回」をお届けします。

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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。

 

欧州へのCVC投資が過去最高額を更新

2021年第一四半期、欧州へのCVC投資が過去最高の45億ドルを突破した。少なくともCVC1社が参加するディール数が2020年第四四半期から50%以上増加していることもあり、今四半期の欧州VC投資総額の約1/4がCVCから出資されている。SalesforceによるウェビナープラットフォームHopin やVisaによるスウェーデン発フィンテックのKlarnaへの大型投資を筆頭に、英国とスウェーデンがCVC投資額でもリードしているものの、ドイツやスペインもアクティブな市場となっている。現在、最も積極的な投資を行なっているのは、GoogleやSalesforceをはじめとする米国企業であるものの、Bankinter、SEB、Shellなどの欧州勢もその勢いを増している。一方、UKTNによると、英国企業への投資は、ソフトバンクを筆頭に、GICやTemasek(シンガポール)、DST Global(香港)、Tencent(中国)などのアジア企業からの投資も急増しているという。

 

重力エネルギー貯蔵システムのEnergy Vaultが資金調達

重力を活用した再生エネルギー貯蔵技術のEnergy Vaultが、新たに2000万ドルの調達に成功した。スイス発の同社は、2019年にソフトバンクより1億ドル以上の出資を得た上、Saudi Aramcoからの投資や伊Enelとのエネルギー貯蔵施設及び材料リサイクルに関する共同開発などで注目されてきた。Energy Vaultの技術は、太陽エネルギーと重力によって100メートル以上のタワー上に設置されたクレーンが35トンのコンクリートブロックを上下させ、その動きによってエネルギーを貯蔵・放出するシステムで、夜間も貯蔵したエネルギーで稼働し続けることができるため、リチウムイオンバッテリーや揚水発電などその他貯蔵技術よりも低価格で効率が高い点を特徴としている。同社によると、2022年末までに顧客との開発システムの稼働を見込んでいる。初めは40〜50MW/時程度の施設規模となるものの、同技術はモジュール式であるため、その後は300〜400MWに至る可能性もあるという。なお、使用される重量ブロックも、廃棄物となった風力タービンブレードや石炭灰など組み込むことで、よりサステイナブルなシステム構築を目指している。

 

大手商社が相次いでイスラエル企業へ出資・提携

住友商事は今週、2019年に設立したCVC、IN Venture を通じて、イスラエル企業3社へ数百万ドル規模の投資を行なった。IN Ventureは、モビリティ及びヘルスケアスタートアップに焦点を置き、既にイスラエル企業6社に出資してきた経緯を持つ。今回出資したOttopiaは、AIを活用してワイヤレスネットワークの状態を予測、さらにビデオデータを圧縮することで、安定したリアルタイムビデオフィードを提供する。住友商事は今後、同技術とともに、日本の自律遠隔制御型農機具・建設機械分野における新たな事業開拓を目指すという。またIN Ventureは、ブロックチェーンセキュリティのGK8と、ゲノム分析プラットフォームのGenooxにも出資した。一方、豊田通商も車両ソフトウェアの脆弱性を検出・分析する自動車向けサイバーセキュリティソリューションを提供するCybellumとの事業提携を発表したばかりで、大型商社はその営業ネットワークとイスラエル企業が持つ革新的な技術を組み合わせた新規事業の育成に注力しているようだ。

 

傷の治療スピードを高めるバイオテック技術

目の怪我を中心に、あらゆる傷を効率的に治療するバイオテック技術を開発するNuVision Biotherapiesが、新たに180万ポンドを調達した。英ノッティンガム大学から2015年にスピンアウトしたNuVisionの技術は、子宮内の胎児を包む羊膜の治癒特性を活かしている。最初の製品となるOmnigenは、その独自の製造プロセスを使用し、傷をより早く治癒できるという特徴のもと、眼科手術で既に使用されている。また最新製品であるOmniLenzは、『包帯コンタクトレンズ』として、ドライアイなどより広範囲の状態を治療するために、外来診療所にて手術なしでも使用することができる。さらにNuVisionの技術は、糖尿病性足潰瘍などその他創傷の治療にも適用できる可能性を秘めており、今後さらなるアプリケーションの拡大に期待が高まる。

 

植木 このみ

Open Innovation Group, Intralink Limited

 

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