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  • 26
  • 2021
  • EUROPE PICK OF THE WEEK

欧州イノベーションインサイト: 第73回

『欧州がユニコーン数で中国を上回る』、『有機土壌物質から電力を生成する、Bioo』、『専門家がみる欧州バイオサイエンスの展望』、『ECG分析AIのCardiomatics が資金調達』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第73回」をお届けします。

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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。

 

欧州がユニコーン数で中国を上回る

 欧州では今年もVC投資において過去最高額を更新し続けているが、同域から誕生したユニコーン数でもついに中国の記録を上回った。今年だけで中国22社の3倍以上となる72社のユニコーンを新たに輩出してきた欧州だが、1990年以降の合計も296社となり、中国の276社を超えた形だ。このユニコーン数に関する欧中間の順位変動は、2016年以降初めてである。また世界でユニコーンを輩出してきたテックハブ170都市のうち、65都市が欧州内に位置しているとされ、このユニコーン数に関する成長も、V C投資額の伸びとともに欧州エコシステムの勢いを象徴する出来事と言える。なお、今年になってユニコーン入りを果たした欧州企業には、暗号取引プラットフォームのBitpanda、デジタル銀行のStarling、ローンチ後わずか9か月で10億ドルの評価に達したオンデマンド食料品配達のGorillasなどが挙げられる。

 

有機土壌物質から電力を生成する、Bioo

既存クリーンエネルギーの多くが風力や太陽光から作られる中、バルセロナ発Biooは、土壌の有機物が分解したときに放出されるエネルギーから電気を生成するバイオリアクターを開発する。このソリューションは、通常のバッテリー同様、アノードとカソードを持ち合わせるものの、リチウムなどの元素を使用する代わりに、有機土壌物質を燃料として使用している。その電力生成能力はまだ大規模発電には適していないものの、現在は土壌水分、pH、気温などの成長条件を監視するためにIoTセンサーを多く使用する農業分野で、化学電池の代替品として広く活用されている。また同社バッテリーの価格は、化学電池と比較しても1/5程度であるため、Biooと提携するBayer Crop Scienceは、50mヘクタールの農地で土壌動力センサーに同社技術を活用し、年間15億ユーロを節約できると予測している。今後はその電力生成能力の拡大につれ、ショッピングモール、オフィス、病院などでも照明用のクリーンエネルギー生成にも活用される予定だ。

 

専門家がみる欧州バイオサイエンスの展望

バイオ技術は、エネルギー、材料、医薬品、化学物質、食品など人類が多くの課題を持つ分野に大きな影響を与えることから、次の産業革命を推進する分野として高い期待が寄せされている。Octopus Venturesのバイオ専門家によると、今後は分子生物学、データサイエンス、自動化などを組み合わせることで各患者に合った、カスタマイズされた治療法や薬品の活用が促進する上、リキッドバイオプシーやMRI・CTを含むスキャン技術の進化により、患者と医師への負担軽減も想定される。一方、製薬会社も治療資産を収益化するため、サブスクリプションなど新しいビジネスモデルを模索する必要があり、大手製薬企業がイノベーション追求のためにスタートアップの買収を行うケースが増えている。McKinseyによる最新レポートにおいても、Novartis、Sanofi、UnileverなどのCVCが特にアーリーステージ企業への投資に積極的であるという。また、欧州にはライフサイエンスに強い大学世界トップ100の半分近くが位置している上、論文発表数や取得特許数でも米中を大きく上回っており、欧州がバイオ技術に関する質と量の両方で優れている点を強調している。

 

ECG分析AIのCardiomatics が資金調達

医療スタッフのECG分析をサポート・促進するクラウドAIツールを開発するCardiomaticsが、シードラウンドで270万ユーロを調達した。ECGは、心臓の電気的活動と心拍数及びリズムに関する情報測定により心疾患を特定するテストだが、複雑で断が困難な分野でもあるため、その結果を理解・分析するために専門家を要することが多い。そんな中、デジタル信号処理エンジニアにより2017年にポーランドに設立されたCardiomaticsのツールは、あらゆる心臓の異常や心臓障害を検出・分析し、記録内の拍動とリズムを明確に視覚化するレポートを数分間隔で作成するため、医師がその結果を理解することを容易にする。同ツールは既に10ヶ国、700以上の顧客に利用され、300万時間以上のECG信号を分析してきた。なお、進行中臨床試験の提携病院には、子供への正確なECG測定値提供を目指すMedical University of Warsawや、Covid-19で入院した患者の心不整脈を調べるUniversity of Baselなどが含まれる。

 

 

植木 このみ

Open Innovation Group, Intralink Limited

 

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