• Nov.
  • /
  • 11
  • 2021
  • EUROPE PICK OF THE WEEK

欧州イノベーションインサイト: 第84回

『欧州インダストリーを支える工業テックエコシステム』、『あらゆる病原体に対応するユニバーサルワクチン』、『COP26でますます重要性を増すサステイナビリティ』、『OQmented 、AR/VRスマートグラス向け技術で資金調達』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第84回」をお届けします。

配信希望はこちらから

このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。

 

欧州インダストリーを支える工業テックエコシステム

欧州では、製造業を中心に活躍するソリューションを提供する工業テックも、今年は例年以上の成長を見せているという。以下、主なポイントをまとめてみた。

欧州工業テック企業へのVC投資:現時点までで38億ユーロ。最終的には昨年の総額15億ユーロの3倍程度に至る予定。

企業価値総額:13社のユニコーンとともに、前年比120%増の739億ユーロを達成。

投資組織:VCではなく、大手企業やCVCからの投資が総額の約半分を占める一方、欧州域外からの出資も55%以上に。

顕著な資金調達事例:データ処理関連でユニコーンのCelonis(10億ドル)、デジタルフォワーダーのForto(2.4億ドル)、ロボティックスソリューションのAgile(2.2億ドル)など。

地域別の特徴:伝統的に重工業に強いDACHや北欧で成熟したエコシステムが構築。特にドイツがユニコーンを最も多く輩出し、ノルウェーとフィンランドの関連企業が多額の資金調達に成功。

 

あらゆる病原体に対応するユニバーサルワクチン

パンデミックにより、新しいワクチンデリバリーシステムと強力な製造パイプラインの構築の重要性を目の当たりにし、ワクチン研究が今まで以上に重要視されるようになってきた。現在、多くのワクチン抗原が単一の病原体成分​​に基づいているため、新しい変異体への対処に関して有効性と能力が制限されることがある中、ロンドン発BaseimmuneはCOVID、マラリア、アフリカ豚熱など、既存ならびに新たに人間や動物の脅威となりうる病原体に対応するユニバーサルワクチンの開発を行なっている。同社のワクチン設計アルゴリズムはゲノム、疫学、免疫学、臨床、進化などに関するデータをまとめることで、まったく新しい合成抗原を生成する。その「ピック&ミックス」された抗原は、特定の病原体に対して現在また将来に認識・対応する必要があると考えられる全情報を免疫系に提示する。次に、抗原の設計をmRNA、DNA、ウイルスベクターなどのワクチン技術プラットフォームにフィードし、すべての変異体に対して有効となる普遍的なワクチンを生成するという。現在、同社はコロナの変異株にも有効なワクチン開発を行なっているが、今後はそれ以外の分野での活躍にも期待したい。

 

 

COP26でますます重要性を増すサステイナビリティ

本日まで開催されているCOP26でさらに持続可能な社会構築への動きが加速する中、欧州でのサステイナビリティ、ESG、クライメートテックなどに関する最新動向を把握しておきたい。既に同分野を取り巻くサクセスストーリーには、今年だけで30億ドル近くを調達し、ギガファクトリー設立も発表しているリチウムイオンバッテリーのNorthvoltや、複合材料を使用した電気自動車・商用車製造で130億ドルの企業価値を達成したArrivalなどが有名どころとして知られている。一方、現在も革新的な技術としては、ソーラーパネルよりも安価な代替案にもなりうる、土壌分解によるエネルギーで動作するバッテリー開発のBioo、環境と労働者の生産性改善に貢献するオフィス内のカーボンキャプチャ技術で、イーロン・マスク氏から1億ドルの賞金を受け取ったSoletair、太陽、雨、風を制御することで、野外農業を模倣する垂直農場で今週4000万ポンド以上の調達に成功したIGSなどが挙げられる。ぜひこの機会に、政府主導でサステイナビリティに強みを持つ欧州エコシステムに改めて目を向けていただきたい。

 

OQmented 、AR/VRスマートグラス向け技術で資金調達

MEMSミラー及びレーザースキャン技術を開発するOQmentedが今週、シードエクステンションにて追加で800万ユーロを調達した。2018年に欧州最大の科学技術応用研究機関である独フラウンホーファー研究機構からスピンアウトし、現在までに約2000万ユーロを調達してきた同社は、プロジェクションディスプレイの分野でリードするディープテック企業である。OQmentedのAR/VRスマートグラス向けMEMSミラーベースのレーザービームスキャンテクノロジーは、業界初のワンチップソリューションである小さなプロジェクションディスプレイとして、スタイリッシュで実質的に無重量のフレームで強力な視覚化機能を備えるスマートグラスに不可欠な実現技術を提供する。この技術は、3Dカメラ、LiDAR、マシンビジョン製品などのアプリケーションに活用することができるという。

 

植木 このみ

Open Innovation Group, Intralink Limited

 

イントラリンクについて

イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。