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  • 16
  • 2021
  • EUROPE PICK OF THE WEEK

欧州イノベーションインサイト: 第89回

『イスラエルが過去最高の資金調達額を達成 』『企業イノベーションの最新トレンド』『ハンブルクに遠隔操作型自動運転車がやってくる 』『「自然に消える」海藻ベース包装材のNotplaが資金調達』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第89回」をお届けします。

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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。

 

イスラエルが過去最高の資金調達額を達成 

2021年、イスラエルのテックセクターには今年過去最高となる250億ドルが投入された。これは108億ドルを記録した前年から136%の増加であり、その成長率は世界平均71%の約2倍で、米国(78%)やシンガポール(95%)、英国(105%)を大きく上回っている。最も顕著な数字を記録したBig3分野は、エンタープライズIT&データインフラ(約60億ドル)、サイバーセキュリティを中心としたセキュリティテック(59億ドル)、フィンテック(42億ドル)で、全調達額の65%を占める。最大の資金調達ラウンドは小売業界向けコンピュータビジョンを開発するTrax(6.4億ドル)だった。またBessemer Venture Partners、Insight Partners、Tiger Globalなどの米国大手VCの参画がこの急成長の大きな要因として挙げられている。なお、弊社は次週に駐日イスラエル大使館経済大使や同国イノベーション庁へのインタビューを中心に、イノベーション大国化した背景やBig3以外の新興セクターにも焦点を当てながら同エコシステムの魅力に迫る特別ブログを公開する予定。

 

企業イノベーションの最新トレンド

大企業とスタートアップとの相互作用を分析したレポートで、多くの企業が展開する効果的な企業イノベーションプログラムが紹介されている。一つは企業独自のスタートアップを設置するベンチャービルティングで、過去3年でこのコンセプトを採用するグローバル大手企業が増加し、現在は約80%の大手企業が関連プログラムを持つという。またほぼ全企業が持ち合わせるコンセプトとして、協業可能性のあるスタートアップ企業をスカウティングするためのベンチャークライアントモデルが挙げられた。さらに、シリコンバレーなどの大型テックハブ以外に拠点を設置するイノベーションアウトポストも相変わらず多くの企業が注力している分野であるとわかった。一方、成果が出にくいモデルとしてはアクセラレーターが挙げられ、プログラムの終了や再構築を迫られる企業が増えている上、85%の大手企業が持つコーポレートベンチャリング機能も大きなリターンを含む成功を収める例は少ないと見られている。そんな中、最近は企業の投資部門がスピンアウトするケースが増えている。既に欧州大手のOrange、Eon、Santanderなどが採用するこのモデルは、企業と密接に結びついた従来のCVCファンドはよりも迅速かつ大胆に行動できると期待されている。

 

ハンブルクに遠隔操作型自動運転車がやってくる

ベルリンを拠点とするVayは、来年初めに独ハンブルグに遠隔操作型自動運転車を導入すると発表した。人間のドライバーが遠隔操作するVayの独特なテレドライブファーストアプローチは、テレドライバーと360度カメラを取り付けた車両を活用するため、Waymo、Teslaなど長年自律走行ロボタクシーを開発してきた企業とは一線を画している。この技術は、遠隔ドライバーへの依存という独自の課題を持つものの、LiDARやレーザーを使用して運転するアルゴリズムを教え込むという、高価で技術的な手間のかかる作業を一部回避できるため、比較的安価で、商業化しやすいとされている。また同社の車両は、制御室との接続が失われた場合には、自動的に路肩に停車するよう設計されている。さらに運転の大部分を乗客に任せながら、テレドライバーによる一定距離間に限った部分的な自動運転の提供により、Uberのようなライドヘイリングアプリよりはるかに安くサービスを提供できる可能性もあるという。

 

「自然に消える」海藻ベース包装材のNotplaが資金調達 

ロンドンを拠点とするサステイナブルパッケージングのNotplaは、シリーズAラウンドで約1170万ユーロを調達した。2014年に設立された同社は、海藻や植物を用いて、産業用コンポストなど特別な条件を必要とせず、わずか4~6週間で簡単に生分解されるプラスチック包装の代替品を提供している。1日で最大1mも成長する海藻は、生産に肥料や新鮮な水を必要とせず、二酸化炭素の吸収も行うことから、地球上で最も豊富なバイオマス源の1つとなりうる。Notplaの製品で、食べられる生分解性パッケージング「Ooho」は既にロンドンマラソンなどでも使用されている上、2021年に新しく発表された段ボール包装用の海藻コーティングも、欧州デリバリー大手のJust Eat Takeaway.comに採用されている。今回の資金調達により、Notplaは生産能力を拡大するとともに、透明なフレキシブルフィルムや、産業プロセスの副産物から作られる海藻紙などの新しい革新的なソリューションを開発することが可能となり、今後外食産業や化粧品、ファッションなどの市場へのさらなる進出が期待される。

 

植木 このみ

Open Innovation Group, Intralink Limited

 

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