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  • 10
  • 2022
  • EUROPE PICK OF THE WEEK

欧州イノベーションインサイト:第96回

『携帯電話の電波を透過させる車窓 』『加工肉の亜硝酸塩使用削減に向けて』『スマートな3Dプリント装具で脊柱側彎症を改善』『欧州の炭素価格、100ユーロに迫る』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第96回」をお届けします。

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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。

 

携帯電話の電波を透過させる車窓

電車の乗客は車内でのインターネット接続を望んでいるが、現在電車で使われている断熱窓ガラスは無線信号を妨げてしまう。鉄道会社は各車両にシグナルブースター(リピーター)を装備することでこの問題を回避しているが、リピーターは高価で、消費電力が大きく環境にやさしくない上、無線技術の進歩のたびに買い替えなければならない。そんな中、EPFLのスピンオフ企業であるnu glassは、携帯電話の電波を透過させるガラスを開発している。この技術により、ルーターやリピーターを設置せずとも屋内での無線接続が可能となる。同社は、鉄道パートナーの列車の窓ガラスで技術テストに成功したことを発表し、鉄道会社と携帯電話事業者の双方に環境面およびコスト面で大きなメリットをもたらす可能性を証明した。次のステップは実際に使用されている列車の車両に製品を搭載し、乗客からのフィードバックを得ることだという。今後の展開に期待したい。

 

加工肉の亜硝酸塩使用削減に向けて

フランス議会は、ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工肉に含まれる亜硝酸塩の使用を段階的に削減することを目的とした法案を承認した。現在、EUでは亜硝酸塩は食品添加物として認可されているが、フランスはこれを使用しない方向に動きを見せている。亜硝酸塩は色鮮やかなピンク色の着色を可能にするだけでなく、保存性の向上や細菌感染のリスク低減など多くの利点をもたらすが、2015年の世界保健機関の報告書では、亜硝酸塩などの添加が発がんリスクのある物質の形成につながることから、加工肉が発がん性に分類された。HertaFleury Michonなどの大企業はすでに亜硝酸塩を含まない製品の実験を開始しており、革新的なソリューションを持つフードテックスタートアップ企業にとってはニッチなチャンスとなるかもしれない。保存期間の短縮や細菌感染リスクなどの課題がどのように解決されるか、今後注目したいところだ。

 

スマートな3Dプリント装具で脊柱側彎症を改善

グラスゴー大学を中心とする英米の研究チームは、脊柱側彎症患者向けバックブレースを3Dプリントするための新材料を開発した。この材料は、軽量でリサイクル可能なプラスチックであるポリプロピレンとカーボンナノチューブを組み合わせて作られ、使用中の歪みや圧力(ストレス)の量を検知することができる。この材料で作られた「スマート」な装具により、脊柱側彎症の治療プロセスは微調整可能かつより快適なものになりうる。研究チームのテストでは、100回の負荷および負荷解除後も素材がひずみを感知する能力を維持していることが示され、装具に使用するのに十分なスマートさを備えていることが証明された。脊柱側彎症患者が医師から個別に評価を受け、個々の状態に合った装具を3Dプリントで製作することも、近い未来に実現するに違いない。

 

欧州の炭素価格、100ユーロに迫る

2005年以来、EUは航空会社など大規模なCO2排出企業に対し、排出したCO21トンごとに代金を支払うことを義務付け排出削減を促すと同時に、環境に配慮した技術に投資する金銭的インセンティブを提供してきた。これまでは炭素価格が低くこれらの促進に限界があったが、近年急激な変化が起きている。2021年始めと比較すると200%以上価格が上昇しており、先週は96ユーロを超える過去最高値を記録。現在急速に100ユーロに近づいている。CO2価格の高騰とスタートアップ企業のエコシステムの成熟により、二酸化炭素回収貯留などの持続可能な技術はますます魅力的なものになってきている。

 

植木 このみ

Open Innovation Group, Intralink Limited

 

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